January 30, 2010

サーバント

 

先日、名古屋でお会いした、ある会社の社長さんがこんなことを言っていた。

 

『自分のした質問は覚えているが、社員の報告は覚えていない』

 

つまり、こういうことだ。

 

社員に対して、あれはどうなっている?これはどうなんだ?ところで、あの件は?などと、あれこれ自分の気になる項目をあげつらい、報告を求める。

 

が、自分が最初に社員に聞いてやろうと思っていた事柄に対して、あれは言ったな、よし、これも言ったし、などとそんなことばかりに集中していたら、肝心な社員の報告自体、内容を忘れてしまった・・・

 

てな具合に、本末転倒な事態に陥ってしまっているという何とも冗談のような話をしていたわけだ。

 

で、その話を聞いて本人含め、私たちは爆笑だったけど、実は笑えない真実がそこにはある。

 

関心がすべて自分にある状態。

 

いわゆる自己中。

 

自己中であることが良いか悪いかと問われれば、多くの人がそれは良くないことだと答えるだろう。

 

となれば、関心は自分以外に向けなければならないということになる。

 

イコール自分のためではなく人のため。

 

と聞くと、しかし、途端に違和感を感じてしまう人が多くなるのはなぜだろうか。

 

ということはつまり、世の中の多くの人が自己中であるという現実がそこにあるわけだ。。。

 

矛盾しているように感じるかもしれないけど、関心は他に寄せなければならないけど、意識は自分に集中していなければならない。

 

つまり、他人がそうだからおれもそうする・・・みたいな主体性のない考え方ではなく、自分はどうするのか?自分はどうなりたいのか?という己の在り方に集中していくと、自然と自分以外の他の人、物、事に関心が寄せられるようになるということ。

 

そういうことなのだ。

 

関心は他人に向いていなければならないが、意識は自分に集中しなければならない。

 

自分の在り方にフォーカスを当てれば自ずと他に関心が向くようになる。

 

自己中ではない状態とはそういうことだ。

 

自分以外の他の人のために、自分がどう在るか、ということに意識を集中しなければならない。

 

その根っこにあるものが『感謝』と『思いやり』。 おー、わが社の理念だ。

 

お客様であれば、いかにお役に立つことができるか。 おー、わが社の『間に合う戦略』だ。

 

人のため、お役に立つ、つくす、という議論は、ケッシテ、ドMだとかドSだとかの話をしているわけではない。

 

いや・・・   そうかもしれんな・・・   ・・・

 

いやいや、そんなところを超越したところでの議論だ。 原理原則の話。

 

会社であれば、社長以下、上司やリーダーとなる人は、社員や部下に対して、いかに自分がサポートできるのか、彼、彼女に対してどんなことに協力ができるのかということに意識を注がなければならない。

 

では部下はどうあるべきなのか?

 

部下が自己中ではない状態とはどんな状態なのだろうか?

 

当然、与えられた権限内で自分のできる最大限のパフォーマンスを発揮し、そしてその行動に責任を持ち、説明責任を果たすこと、つまり上司に自らが報告・連絡・相談をすること。

 

もちろん、上司はそれらを受け入れやすい環境を作らなければいけない。

 

叱られると思ったら、部下は相談すらしたくなくなる。

 

それでは、成果を出すために邪魔になる問題は放置されたまま、さらに大きくなるばかり。

 

煙草の不始末がやがて山火事になってしまう。

 

コップ一杯の水で消すことのできる火種が、いかにして消火活動に莫大な時間と労力を注がせる事態に陥ってしまうのか。

 

これが組織内で起こっているという事実。

 

≪課長になると舌を抜かれ、部長になるとタマを抜かれ、役員になると脳みそを抜かれ、社長になると舌だけ戻ってくる≫

というような組織内における問題を痛切に皮肉っている笑い話がある。

 

笑えない人も多かろう。

 

問題は、社内の人間がお互いに感謝や思いやりを持った上で、信頼、信用の関係が構築されていなければ解決されない。

 

だからこそ、組織内にそのような風土が育つような文化を構築したり、社員教育をしていかなくてはならないのだ。

 

そうすれば、冒頭の社長さんが抱えるような悩みは払しょくする。

 

報告を尋ねなくてよくなるのだ。

 

もっと言えば、究極の姿として、各々が、それぞれの責任を全うしていく風土さえできて上がってしまえば、報告すらいらなくなるのかもしれない。。。

 

 

 

サーバントリーダーシップ。

 

『サーバント』を辞書で引くと下僕や召使いと書かれています。

 

本当に大事にしている価値感に従い、社員や部下たちがそこに向かって懸命に努力しているのであるならば、上司や経営者がそれをサポートするのは当たり前のことなのだ。

 

経営理念に導かれるリーダーシップ。

 

会社の在るべき姿と成果に集中する。

 

であれば、自ずと会社以外の他者、つまりお客様や地域、各ステークホルダーに関心が寄せられるようになるのだ。

 

ヒエラルキーの頂点、ピラミッドの頂点にいる者。

 

誰だ?

 

すべての問題の根はその組織のトップにある。

 

ピラミッドを反対にしてみよう。

 

逆三角形。

 

だから、私はみんなの従者となろう。

 

 

 

 

 

 

 

げぼく

誰か買って・・・



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この記事へのコメント

1. Posted by nobu   February 09, 2010 04:31
サーバントリーダーシップのことばにひかれてやってきました。

自分のしたことを覚えているけど、部下のしたことは…

どきっとしました。

いつのまにか、自分中心ばっかりになっていることに気がついて、いやになってしまいます。

これからも、愛読させてもらって、意識をもちつづけるようにしたいと思います。
2. Posted by 伊藤   February 10, 2010 19:15
nobuさん

はじめまして。コメントありがとうございます。

サーバントリーダーシップでここに来れました?へぇ〜。

nobuさんは牧師さんなんですね。

こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。

ありがたい説教を拝みたいものですねぇ。

悪行三昧の私の懺悔も聞いてもらいたいもんです・・・

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